2014年02月20日 10時00分 公開

「投資のプロ」を装って女性からカネを騙し取る

• 桃色コラム

• 出会い

あるラブホテルの一室。一戦交えた後の男女が、ベッドの上でテレビを眺めていた。番組の合間のニュースで、株価や円相場の情報が流れていた。それを見ながら、男がいきなりしゃべり始めた。 「うーん、当分は円安だな」とか、「ニューヨークよりも、週明けにはロンドン市場が荒れる」などとまくし立てた後、女性のほうを向いていった。

被害者：ＯＬ（31）ほか数名
犯人：国吉孝正（38）アルバイト
犯行手口：出会い系サイトで知り合った女性たちに「自分は株や先物取引のプロ」「１週間で５万円から10万円は儲かる」などといって、20代から40代までの女性から、一人当たり３万円から15万円を騙し取っていた。

あるラブホテルの一室。一戦交えた後の男女が、ベッドの上でテレビを眺めていた。番組の合間のニュースで、株価や円相場の情報が流れていた。それを見ながら、男がいきなりしゃべり始めた。
「うーん、当分は円安だな」とか、「ニューヨークよりも、週明けにはロンドン市場が荒れる」などとまくし立てた後、女性のほうを向いていった。
「アベノミクスでさ、いまは儲けどきなんだよね。投資とかに、興味はある？」
いきなりそう聞かれて、女性はとまどった。
「株っていわれても、よくわらないし。証券会社の人なの？」
すると男は、笑いながらいった。
「ちがうよ。フリーでやっているんだ。俺、実は投資のエキスパートなんだよ。株ももちろんだけれど、不動産や商品先物、それから保険やＦＸ、ゴルフ会員権なんかも扱うよ」
そして、取引手数料やら空売りやらと業界用語を並べ立てると、女性のほうに向き直っていった。
「どうかな、ちょっと儲けてみない？」
「えっ、無理よ、まったくわからないもの」
「大丈夫、俺に任せてよ。えーと、先物やＦＸは儲かるけれどリスクが高いからおすすめできないな……」
そんなことをいいながら、男はスマホをいじりだした。そして、しばらくしてから女性に向かっていった。
「うん。週末を目指して売れば、十分儲かるよ。20万もあれば、倍くらいになるけれど、どう？」
「えっ。20万円なんて無理よ」
「そう。じゃあ、10万円では。まだだめ。それなら、５万円でもできるよ。手数料を引いても、６万くらいは利益が出るから」
そんなことをまくし立てて、男は女性から５万円を受け取った。
「それじゃ、さっそく空売りをかけるから。お金は儲かった分とあわせてキミの口座に振り込むから」
男はそういって、街のなかに消えていった。
その後、男からの連絡はない。教えた銀行口座にも、何の入金もなかった。女性が騙されたと理解したのは、そのすぐ後だった。
男の名は国吉孝正（38）。プロの投資家どころか、ただのアルバイトだった。あるとき、適当な経済用語で女性を騙せたことに味をしめて、同様の手口でカネを騙し取っていた。その金額は、約150万円。そのほとんどは、借金の返済や遊興費に消えていた。

「必ず儲かる」という触れ込みで近寄ってくるインチキ詐欺は後を絶たない。そういう連中は、言葉巧みに、あるいは強引なやり方で現金を奪っていく。実に卑劣な輩である。
だから、すべての人々は世間一般の大原則を忘れてはならない。それは、儲け話が向こうからやってくることなど、絶対にないということである。
もし、極めて効率的に利益を生み出す手法があるとしたら、容易に他人に教えたりはしないのが道理である。どこからか近づいてくるのは、儲け話ではない。あなたをカモにして自分が儲けようという連中にほかならないのである。

※登場人物はすべて仮名です。
※実際の事件をもとに構成しています。